要約
『“ツヤのある小豆を選びましょう”
小豆を購入する際、
決まり文句として必ず登場する“ツヤ”
そもそもなぜツヤのある小豆が良いのか。
その不思議には触れず、
ツヤがあるものを選べ!の大合唱。
なぜ、小豆にツヤが必要なのか、
知っている方は読まなくて良い投稿』
更新:2022/01/31
・レイアウトを一部変更
・挿入図を正しいものに差し替え
2019年3月31日夜。
新元号を“小豆”と予想していた。
小豆元年とかいいと思う。
そんな話はさておき、
例のごとく小豆を炊きたくなったので
小豆を炊いた。
この季節は、ストーブの上で焼き芋も
小豆も炊けるから良い。
土鍋で炊けば、蒸らしがいい感じに
なりふっくらな小豆に仕上がると思ってる。
で、今回、本当に書きたかったのは、
小豆を脱穀したよ〜
という投稿。
今更かよという感じもあるのですが
今更脱穀しました。
小豆に限らず、豆はさやという
ベッドみたいなものに包まれている。
雨や虫から小豆を守る役目だ。
小豆は私たちにとっては食べるものだが、
小豆自身にしてみれば、
次世代へ子孫を繋ぐ
“タネ”である。
このタネがなくなれば
世代が終了し、
この世から小豆は消える。
この世に小豆が存在し続けるのは
賢い人たちが、来年まくタネ(小豆)を
ぜんざいにしないで保存してくれている
おかげである。
さやに包まれていれば
虫さんや雨からは身を守れる。
しかし、人間の食欲からは逃れられないのが
小豆の宿命だ。
という感じで
話を続けるとツヤの話にたどり着けないので
脱穀の話はこれにて一旦終わり。
本題の
ツヤのある小豆選びは正解なのか?
について述べたい。
正直、
小豆にツヤがあろうがなかろうが
どうでも良いと考えている方が大半であろう。
そういう方々にとってこの記事を読むことは
時間の無駄であることを予め申し上げる。
しかし、こんなコアな記事を読み進める
画面の前のあなたは
よっぽど、小豆好きか
まなべが好きか
私の書く文章が好きか
餡子が好きなのであろう。
こうして、氣のあう方々と
交流できて大変嬉しい次第である。
話は逸れるが(逸れまくり)
農家さんから美味しい野菜を
購入するコツはただ一つ。
氣があうかどうかで決めれば良い。
またこの話をしだすと脱線に脱線を重ね、
逆に、
隣のレールの上にうまいこと活着した。
よって、
いよいよ、本題にうつろう。
ネットで「美味しい小豆の選び方」
を調べると、
だいたいどのページにもこの文言を
見つけることができる。
「ツヤがあるものを選びなさい」
と。
ただし、それで終っているものが
ほとんどである。
なぜツヤのある小豆を選ばないといけないのか
その理由が添えられている記事を
見たことがあるだろうか?
私は無い。いやー
正確に言えば、
本日4月一日の午前まで無かった。
しかし、今日、ツヤの理由がわかった。
調子に乗ってこの投稿をしているが
私も今日まで知らなかった情報である。
きっかけ
私はもともと和菓子屋の販売員をしていたので
小豆に関することも多少は知っていた。
ツヤのあるものが良い
研修中にもそう教わっていた。
ところが、今朝
異変に氣付いた。
脱穀している小豆に全くツヤがない
のである。
収穫は昨年(2018年)の秋。
今朝まではさやに包まれ保存されていた。
鮮度が落ちたのだろうか?
いや、それはない。
それはないよ。
なぜなら、
さっきまでさやに包まれていたのだから
それなりに鮮度は保てていたはずだ
という謎の確信があった。
だとしたら、
ツヤは一体誰の手で
なんのために施されているのか。
この難題には、
あの少年名探偵でさえも
泣き出して家に帰ることだろう。
現時点でわかっているのはただ一つ。
収穫直後の小豆には
ツヤがない。マットな感じ。
にも関わらず、
ツヤのあるものを選べだと??
一体どういうことなのだ。
この難題を
小豆のツヤ事件
と呼ぶことにする。
私が勝手に事件とよんだだけで
小豆業界ではずーっと前に
解決されていて、例えば
①車ってアクセル踏めば進むよね。
②なぜなら、燃料入れているから。
の会話の中で②が当たり前になって
説明するまでもないことのように
ツヤ事件が扱われている可能性もある。
しかし、
私は、まだまだ小豆初心者だ。
アクセルを踏めばスピードが
出るのは知っている。
だけれども、
なぜスピードが出るのか分からないのだ。
もう一度言う。
畑の小豆にはツヤがない。
売られる時にはツヤがある。
ツヤがあるものがいいものとされる。
この疑問に答えておかねば、
シェフが来園した時、
「 ヘい、ミスターまなべ。
小豆はツヤのあるものが美味しいはずだ。
なぜ君の畑の小豆には
全くツヤがないんだい?」
と質問された時
「I don’t know.」
と答えていたのではまなべ農園の園主として
失格である。
故に、私は、
小豆のツヤ事件を今のうちに
解決する必要があるのだ。
結論
結論から述べたい。
と言っても、ここまで2,000字近くあったので
結論を述べたいとドヤ顔で言うのは
遅すぎる。
しかし、こう考えてはいかがだろうか?
餡子はすぐできない。
皆さんは、餡子を自分で練ったり
自家製のぜんざいを作ったりするはずだ。
(謎の確信を持って述べております)
小豆が餡子になるまで待てる勇氣があるのなら
結論を待つ勇氣を持っているはずだ。
だから私はあえて、
小豆を煮詰めるように、
結論をこの場所に配置した。
ちなみに、現在地は、餡子製造過程に例えると
蒸らしの時間に入る頃だ。
「 ヘい、ミスターまなべ。
小豆はツヤのあるものが美味しいはずだ。
なぜ君の畑の小豆には全くツヤがないんだい?
Hey, Manabe,
Azuki should be delicious with luster.
Why is there no gloss on your field azuki?」
シェフ、ご質問いただきありがとう。
すでにその答えはこのサイトに書かれてあるんだ。
もちろん、私が書いたものだがね
小豆の出荷工程
2014年福井県による研究レポート
「転作小豆の高品質栽培法」
によれば、
収穫→乾燥→選別→研磨→選別→出荷
が出荷工程である。
ん?
研磨?だと??
小豆を磨いている?
同レポートによれば、
研磨は、小豆特有の調整工程です。
厚手のタオル布地を張った回転ドラム(米選機や直 播水稲のコーティングマシンの利用)やタオル布地の袋に入れた小豆を回転ドラムにかけるなどして共磨きにし、種子の表面に艶を出します。研磨の目的は、
加工時の吸水時間を均一にして、
加工製品(餡、赤飯等)の品質を安定させるためです。
答えここにあり。
は〜、なるほどなるほどなるほど〜。
もっと詳しく。。
北海道立総合研究機構十勝農業試験場
生産システムグループ 研究主任 原圭祐(2014)によれば、
小豆は吸水が種瘤部からのみ行われるため、他の豆類と比較して吸水速度が遅く、長時間の浸漬 でも吸水しない石豆と呼ばれる硬実がみられることから加工適性向上のためには吸水性の改善が求められている。
縦軸式研磨機のロータに耐水研磨紙(ヤスリ) を貼って研磨することにより、汚れ除去と同時に 小豆の吸水性を向上することができる(図5)。
ヤスリ研磨により、小豆表面に微細な傷が形成されることから、種瘤部のみならず種子表面から吸水する。
このため、吸水時間が短縮し、煮ムラが 小さくなる。未吸水小豆を対象にヤスリ研磨をすると、全ての粒が吸水するようになり、未処理と比較して煮熟増加比が大きく、あん滓率が小さくなる。なお、ヤスリ研磨した小豆の表面傷が農産物検査で格下げ要因となることは無かった。
ヤスリ研磨した小豆の煮熟特性や貯蔵性、
あんの食味 官能評価が通常の皮革研磨した小豆と比較して劣ることは無かった。
実需評価ではヤスリ研磨した小豆は煮ムラが小さく、皮が軟らかく、炊きやすいとの評価を得ている(図6)。
以上のように収穫から調製までの機械化および
それに伴う栽培条件や処理条件の研究が行われ、
機械の更新時期等にあわせて徐々に既存技術に置 き換わり普及が拡大している。特産種苗 第18号 「北海道における小豆の収穫体系」より引用
なるほど。
単純に見た目がピカピカするだけではなく
研磨することで
汚れを落としたり、
さらには、吸水率がよくなり、
小豆の煮えムラが
少なくなり、
最終的には、美味しいあんこに
近づくと言うわけだ。
よって、私はシェフにこう答えるだろう。
シェフ、その通りなんだ。
畑の小豆にはツヤがないマットな状態が普通だ。
ただ、美味しい餡子の需要に答えるため、
出荷段階で小豆に磨きをかけることにした。
なぜ磨くかって?
汚れを落としたり、磨いた傷跡から水を吸いやすくして
煮えムラを少なくするためさ。
ツヤは磨くからこそできるものなんだよ。
今のところ私の農園は、全て手作業によって選別している。
磨きもかけていない。
いいじゃん、煮えムラを楽しめるのも
今だけかもしれないからね。
ん〜、と言うことは、
ツヤのあるものを選べ!
と言うのは正確に表現すると、
ツヤがあるから美味しいと言うわけではなく
美味しい餡子を炊くために
出荷工程で小豆にツヤを出している。
と言った方が正確だ。
言葉は正確に使わなければならない。
畑から離れて
スーパーで並べられたものばかり見ていると
ツヤの不思議には辿り着けなかっただろう。
道の駅とかで販売している小豆は
マットな感じだ。
ツヤがある小豆が美味しい
で覚えてしまうと、
マットな小豆はまずいと勘違いしてしまう。
違う、違うんだ。
マットな小豆は畑の小豆なんだ。
研磨機があるのは大きな企業だ。
普通の家にはない。
ツヤがあるものより炊くのに時間がかかるかもしれない。
煮えムラが出るかもしれない。
少し硬いかもしれない。
でも、大丈夫。
美味しくなるまで炊けばいいのだ。
こんな素晴らしい発見をできてしあわせだ。
今朝、
脱穀をさせてくれた小豆ちゃんに感謝したい。
そして、最後までお読みいただいた皆様にも。
いつもありがとうございます。
参考文献(リンク貼ってます)
・転作小豆の高品質栽培法(福井県)
・特産種苗 第18号 「北海道における小豆の収穫体系」
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まなべ農園Instagram
https://www.instagram.com/kazutaka_manabe/?hl=ja
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素晴らしい記事をありがとうございます!
この秋、小豆をはじめてさやから出したときすぐさま沸いた疑問がマットなこと。
同じく畑で収穫したムング豆はさやから出してもすぐにツヤツヤなのに。。。
畑仲間に、小豆にツヤがないけどまだ豆が未熟なのかな?と聞いても分からず、この記事に辿り着きました!
まさか市販の小豆は、見栄えを良くするためにコーティング剤でもぬってるんじゃないの???というわたしの疑心暗鬼な気持ちは晴れました!
磨くにも理由があったんですね。
深く反省とともに
スッキリ!
試しに一粒をタオルで磨いてみたらピカピカになりました✧
小豆好きでもなければ餡子好きでもない自家採種にハマっているセラミックアーティストより。
楽しい記事をありがとうございました!
のやさま
コメントありがとうございます。
自分では書いたことすら忘れかけておりましたが、
こうしてのやさまのお役に立てたこと喜ばしく思います。
磨くとピカピカになって嬉しいですよね。
美味しいぜんざいになりますように^^
まなべより