今回は、今年栽培予定の「白小豆」について
お話しようと思います。
白小豆は、栽培が難しいけれども
知る人ぞ知る伝説の小豆です。
 
その風味が食べたものを虜にし、
高級和菓子の白あんの原材料として
使われています。

私は、2016年の農業研修が始まった時から
白小豆の試験栽培を始めました。
今年で五回目の種まきとなるわけですね。
 
しかし、
過去四回ともうまくいった試しがありません。
 
毎年、虫にやられて、収量が上がらず、
食べるぶんがいつもないのです。
このままでは万年試験栽培で終わってしまいそうな
勢いです 😥 
 
 
昨年蒔いたものは全滅しました。
 
なので今年は、タネを更新して
またタネ屋さんからタネを購入し
心機一転、白小豆をゼロからスタートして
見ようと思います。
 
実は、昨年まで栽培していた白小豆は
品種が謎のまま栽培していました。
タネ屋さんのタネ袋には品種名が書かれてある
場合がほとんどなのですが、
書いていなかったからです。
 
 
しかし、今回は、
 
『きたほたる』
 
 
 
という、かっこよさと可愛らしさを
併せ持つ、中性的な名前で
とても美味しそうなムードを醸し出して
くれています。
 
白小豆の主な産地は、北海道や
岡山(備中白小豆と呼ばれ有名)、
群馬茨城でも栽培されています。
 
品種もその地方、
それぞれにあったものが
栽培されているわけですね。 
 
ただ、普通の赤小豆と比べて
栽培が難しく、収量が確保できないことから
超希少な小豆、それが白小豆となります。
 
普通のスーパーでは
まず見かけません。

 
なぜ収量が上がらないのか、
というと、色が白色だからだと思います
 
科学的根拠にかける話をしますが、
普通の赤色の小豆は、
大昔から儀式のお供え物として
活用されてきました。
 
赤色が魔除けになる、と言われていた
からです。
 
おそらくそのノリで、
虫とか病氣とかに対する態勢も
白小豆と比べて整っているのではないか、
と思うのです。
 
この証拠に、aikoさんの『瞳』という
曲の一節をご紹介します。

健やかに育ったあなたの
 
真っ白なうなじに
 
いつぞや誰かがキスをする
 
-aiko『瞳』より

 
健やかに育つと
誰かにキスをされてしまう、という
のです。
 
誰かにキス、
というのは虫がやってくる
と解釈してもいいでしょう。
 
つまり、
 
白色、
というのはいい意味でも悪い意味でも
襲われやすい習性があるというのです。
 
反面赤色は、それらをバリアするのです。
真っ赤なうなじに一体誰がキスをしようと
するのでしょうか? 😐 
 
 
さて、いよいよ本題『きたほたる』
についてお話しようと思います。

目次(クリックすると該当箇所へワープできます)

  1. いったい君はどこからきたのか?
  2. 舌触りはエリモショウズに比べてどうなのか?
  3. 総合的な味評価は?
  4. 美味しさは種子消毒の有無が関係する?
  5. 結局「きたほたる」は美味いのか?

 

1.いったい君はどこからきたのか?

私は新しいタネをまく時、
君は一体どこからきたのかを尋ねます。
 
デートの時、
出身地を聞くのと同じですね
デートで相手の出身地を聞くのに
食べ物のこととなると出身地を氣に
しない人が多いのはなぜでしょうか?
 
それは食べるのが
好きではないからです。
 
私は食べるのが好きなので
出身地を食べ物に尋ねます。
 
とはいえ、
食べ物は言葉を話すことができないので
資料をみて調べるという手順になります。
 
今回参考にした資料は、2005年北海道農試集より
 
アズキ新品種「きたほたる」の育成
https://www.hro.or.jp/list/agricultural/center/kankoubutsu/syuhou/88/88-2.pdf
 
です。
 
パパッと見てささっと帰る予定だったのですが、
想像以上に面白いことが書かれてあったので
色々と考えてしまうことがありました。
それが目次に示された通りです。
順に述べていきますのでご安心ください。
 
まずは、家系図についてです。
今、私たちが食べている野菜や穀物などは、
大昔、野生に生息していたものを
人間が仲間にしてきたという経緯があります。
 
人間が野菜を仲間にすると
野菜は人間の都合のいいように
品種改良されていきます
 
都合のいいよう、というのは
味が良く、収量が多く、
病氣に強く、
改良してゆく、ということです。
 
改良というのは、
タネを分解してチップを埋め込む
という話ではなく、
何かと何かを合体させ
子供を産ませる、ということです。
 
ポケットモンスターのゲームや
ドラゴンクエストなどのRPGでも
交配させて卵を産ませて
親より強い子供を産ませる、というノリ
があるように、
 
食べ物に関してもそんなノリが
あると思ってください。
 
ゲームの世界では、
プレイ時間を稼げば、短時間で
自分の都合のいいモンスターを
作ることができます。
 
しかし、食べ物の場合、
人間側のプレイ時間を稼いでも
時間を短縮することは300%できません
 
野菜には野菜の流れる
時間があるからです。

 
芽が出て葉っぱを出し、花をつけ
タネを残す、
この営みは一年に一回です。
 
私たちが、
ゲームをするように
野菜に釘付けになっても
成長スピードが早まることはありません。
 
これは絶対に忘れてはいけません。
 
とても大切なことなので
覚えておいてください。
 
さて、「きたほたる」氏は、
どのような過程を経て
私の元へやってきたのでしょうか? 
 
そんな時役に立つのが家系図です。
 
なにはともあれ、こちらの図を
ご覧ください。
 

 

きたほたる
色文字は筆者が資料に手を加えたもの

 
 
きたほたるが誕生する前には、
一年や二年ではない、
すごい歴史が流れてきているのが
わかると思います。
 
 
読者の皆様の中には、
中学時代の合唱コンクールで
「COSMOS(コスモス」
という曲を歌った方がいらっしゃるかも
しれませんね。
 
その歌詞の一部を借りれば、
先ほど申し上げた、
すごい歴史というのは次の
言葉で表すことができます。
 
 

百億年の歴史が

今も身体に流れている

 
 
 
唐突に聴きたくなった方は
こちらからどうぞ↓

 
 
きたほたるには、
北海道の1950年代在来品種であった白小豆(川西)

お馴染みの「エリモショウズ」、
さらには、兵庫県の在来品種
の血も流れているわけであります。
 
タネに限った話ではありませんが、
独立で存在しているものはありません。
 
どれもが誰もが
何かの誰かのとの関係性の中で
存在しています。
 
君がいるから僕もいる、
僕がいるから君もいる、
 
ということです。
 
彼女と彼氏は相互関係です。
彼女は独立して存在しません。
彼氏がいて彼女も
彼女がいて彼氏も
存在するのです。
 
 
ですから、きたほたるも
そういった関係性の中で生まれてきて
私の元へ長旅をしてやってきた、
白小豆なのです。
 
ですから
この家系図は感動ものなのです。
 
そこには、
何人もの育成者が関わっています。
 
多分、私はその方とお会いすることは
ないでしょう。
白小豆に限らず
他の野菜においてもそうです。
 
今手元にある、タネは
私の知らない誰かのおかげで
存在しているのです。
 
 
1993年から育成が始まり
2004年の品種登録まで10年の歳月を
要しています。
さらにそこから2020年まで
16年。
いや、1993年の育成が始まる前から
ずっとずっと前から小豆の歴史は
始まっているのです。
 
どこかで途切れてしまうことなく、
タネを人間が繋いできたからこそ、
私の手元にやってこれたのです。
 
本当に素晴らしいことだと
思います。
 
 

2.舌触りはエリモショウズに比べてどうなのか?

さて、次は、きたほたるの
味わいについて見てゆきます。
 
私は「美味しいもの」を栽培する農家です。
まずいものは栽培したくないので
美味しさがどのように決まるのか
関心があります。
 
白小豆は主に白あんとして利用されます。
 
餡子にした時の味わいを決める要素の一つに
「舌触り」が挙げられます。
 
舌触りというのは、滑らかであったり
口どけに関係するのですが
私がこし餡を食べる時、この口どけの良さ
を美味しさ指標の一つとして捉えています。
 
では、餡子の口どけの良さは
なにによって決まるのでしょうか?
 
そこで重要な指標が「餡粒子」と呼ばれる
ものです。
 
簡単に言えば餡子にした時の細かい細かい
細かいつぶつぶの大きさのことです。
 
小豆博士の加藤淳先生のお話によれば、
 

人間は、10ミクロンの大きさの違いを舌で
感知することができる。
大体の餡子の平均粒径は100ミクロンとされています。
少し大粒の大納言小豆だと120ミクロンです。
120ミクロンあたりになると舌触りが
ざらついてくる。

 
森田農場公式サイト「小豆と美味しさ」から引用
https://www.azukilife.com/colamn/oisisa.html
 
*余談ですが、森田農場さんとは
2019年の餡子食べ比べ会でもご一緒させて
いただきました.参考記事は記事末に記載*

色文字は筆者が資料に手を加えたもの

 
 
つまるところ
舌触りに関して言えば、
この餡粒子を普段私たちが食べている餡子の
100ミクロン(一ミクロンは1000分の一ミリ)
とほぼ同等であれば
好ましい食感である、となるわけですね。
 
ちょうどその値も資料に載っていたので
ご紹介します。
 

 
お馴染みのエリモショウズ餡子は、
108ミクロン
 
きたほたるは、112ミクロン
となっています。
4ミクロンの差ではありますが、
エリモ小豆とほぼ同等の値です。
 
きたほたるが誕生する前に育成された
ホッカイシロショウズは、117ミクロンですから
エリモショウズと比較して
舌触りが少しゴロゴロするかもしれません。
 
以上から、
 
きたほたるは、
こし餡にした時の舌触りが
これまでの品種「ホッカイシロショウズ」より
改善された(エリモショウズに近づいたという意味で)
と言えます。
 
とは言え、
実際の味わいは餡粒子だけで
決まるわけではありませんから、
 
実際に食べて見ての評価が氣になるところです。
 
 
ご安心ください。
 
餡子にした時の食べ心地試験結果も
資料に記載されているので
ご紹介します。

 

3.総合的な味評価は?
色文字は筆者が資料に手を加えたもの

 
 
注目すべきは、加工業者による
評価です。しかも一年だけではなく
複数年に渡って評価している点も
見逃してはなりません
 

 
次の目次に続く
ネタバレタイトルも写真に入っていますが
おきになさらず。
 
東京A社は、2000年、2001年、2003年
の三年間に渡り、
きたほたるを餡子(つぶあん、こし餡)
に加工しています。
 
ホッカイシロショウズと比較して
その味わいがどうなっているのか、
について記載されています。
 
まずは2000年、初めて
きたほたるを餡にした時の
評価は、
 
 
◯(やや優る)
 
 
です。
 
 
お、これは
ホッカイシロショウズより
美味しい餡子ができるのではないか、
と期待してしまいそうですね。
 
そして、2001年。
二回目のきたほたる餡子です。
 
なんと、その評価は、
 
 
◎(優る)
 
 
という、最上級の評価をもらえました。
 
ホッカイシロショウズより
優るのです。
よって、
もう、いいじゃないか、
 
きたほたるで餡子作ろうや 😎 、
 
という流れにはならず、
 
もう一回、食べよう、
ということで
2002年にも同様の比較試験をしました。
 
ところが、総合評価は
 
 
□(同等)
 
 
つまり、
ホッカイシロショウズとほぼ一緒やで 😎 
 
という評価を下されてしまったのです。
 
2000年、2001年と
ええやん 😀 ってなっていたのに、
 
2002年になって、
 
あんまり変わらん 😐 
 
という評価になってしまったのです。
 
これは絶望という言葉がぴったり
です(笑)
 
美味しくなるために改良したのに
一緒って言われたらショックですよね。
 
私が育成者だとしたら
悔しいし、
食べた人に対して
「あなたの舌が狂ってる」
と言いたくなります。
 
 
しかし、ここは感情的にならず、
理性的になって考えてみます。
 
2000年2001年2003年
この三年間で何か変わったことが
なかったのか
調べる必要がありそうです。
 
ご安心ください。
それについてもこの資料に
掲載されていますので
次章で見てゆきます。
 
この資料最強です(笑)。
 
 

4.美味しさは種子消毒の有無が関係する?
色文字は筆者が資料に手を加えたもの

 
さて、

2001年と2002年を比べて
何が違うのか。
 
一つ、明確な事実として
あげられるのが、
 
種子消毒の有無です。
 
種子消毒というのは、
 
病氣を防いで発芽をよくするために
行われる農薬処理です。
 
これは、豆だけではなく
多くの野菜のタネで行われています。
種子消毒の有無は種袋に書かれていますので
ホームセンターなどに置かれている
タネ袋を観察して見てください。
 
消毒されたタネには色がついています。
とうもろこしは、普通黄色ですが
消毒されたものは、赤色を塗られて
いたりします。
かぼちゃには青色だったり
その他の色だったり。
 
色々あります。
 
実は、白小豆は発芽率が悪いのです。
 
これは2016年に私が初めて
白小豆のタネを蒔いた時から
感じていました。
隣の赤小豆はみんな発芽が揃うのに
白小豆は、まばらにしか発芽しなかったのです。
 
真っ白なうなじにキスをされた
のでしょうか?
 
真相はともあれ、
発芽率をよくすることは、
 
栽培者にとって、重要なことです。
 
蒔いたタネが発芽しなかったら
収量を上げることができませんので。
 
種子消毒の有無は
次の表で確認することができます。
 

 
 
2001年は消毒無し
2002年は消毒有りです。
 
そして
種子消毒をした方が発芽がよくなっている
ことも確認できます。

つまりこのことから、
 
2001年、◎(優る)
と評価された年は、
種子消毒をしておらず、

2002年、(同等)
と評価された
年は、種子消毒をしているのです。
 
つまり、
 
種子消毒をしたおかげで、
発芽は良くなったが
味わいは悪くなったとも
言えます。

ここでこの話を切り上げたら
種子消毒をした豆はまずい
種子消毒をしない豆の方が
美味いんだ、
 
農薬害悪論を主張することも
できますが、
 
私のブログの読者はこのような
安易な主張を信じることは
しないのです。
 
ゆえ、
ここから考えることは、
 
 
本当に種子消毒の有無だけが味わいに
影響したのか?
 

と考える必要が有ります。
 
今回のきたほたる餡子の味わいが
原材料の出来具合要素に左右される
と仮定します。
 
原材料の出来具合に
種子消毒がどのくらい影響を
与えるのか、それは未知数です。
 
また作物ですから、
その年の氣候も影響を受けるでしょう。
 
さらに、
資料に記載されたあった
重要な文言を見落としてはなりません。
 
先ほどの写真の赤枠を
もう一度ご覧ください。

3)「きたほたる」は2001年提供種子は、前年採種時に
著しい降雨害を受けた

とあります。
 
2001年に蒔くタネは
2000年に採種します。 
その2000年にたくさん雨が降って大変だった、
ということが書かれてあるのです。
 
白小豆側からしても大変です。
せっかくタネを残そうとしても
雨がザーザー降っていて
「あぁ、死んでしまう〜 🙁 」
と危機感を感じながら生活していたのですから。
 
しかし、
「あぁ〜、死んでしまう〜」
と思いながらも
生き延びることができた種子が
 
2001年に蒔かれたのです。
 
クライシスを感じてどうにかこうにか
生き延びたタネは翌年、
 
「よっしゃ〜、元氣はつらつじゃ!」
 
となって成長し、またタネを残します。
 
2001年の味評価が
◎(優る)となっていたのは、
 
前年の種採りの際に大雨が降っていたから
 
とも言えませんか?
 
氣候も2002年より2001年の方が
きたほたるにとって、良かった
からかもしれません。
 
このように考えると、
 
たくさんの要因が見えてきます。
 
ですから、
味わいを決定づける要素を
種子消毒の有無だけで語るのは
間違っています
 
科学的ではありません。
 
 
もし、種子消毒の有無が味わいに
影響を与えるか否か、
を調べたかったら
 
同じ年に同じ場所で、
種子消毒有きたほたると
種子消毒無しきたほたるを
比べて味わいの違いを調べる必要があるのです。
 
そうすることで、
氣象条件が揃いますから
種子消毒の有無が味わいに影響を
与えるか否かを調べることができるのです。
 
比較するとき、条件を揃える、
 
これはとても大切なことです。
 
ですから、
今回用意した資料で味わいについて
言えることは次のような結論です。
 
 
ホッカイシロショウズよりも
きたほたるの方が多分美味い
 
 
 
という曖昧な結論です。
 
私たちは、曖昧な結論をされると
むにゃむにゃしますね。
 
白黒はっきりさせるのが
氣持ちよくて、
安心して生きられます。
 
でも、現実世界で
白黒はっきりしているのは、
 

僕は君のことが好きだけど
君は僕を別に好きじゃないみたい
 
-back number 「僕は君のことが好きだけど
君は僕を別に好きじゃないみたい」-

 
という好きな人に
告白シーンにおいてのみです。
 
 

 
 
 
好きじゃないと言われたら
それはそれで安心できますよね

告白したけれど、
 
「好きなんだけど付き合えない」
 
とか言われたら、
一体なんなんだ、
 
となります。
モヤモヤします。
 
しかし、このモヤモヤこそ
科学の醍醐味です。
 
次回は、
 
餡の紫色はアントシアニンではない!
 
という衝撃の事実をお伝えします。
私は、あの色はアントシアニンだと
思っていました。
 

おしまい。
 
最後までお読みいただき
ありがとうございました。
 

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