彼は一人ぼっちで暮らす蜂をみて、
「君もひとりか、ドンマイやな 😉 」
と、
家に帰る度に蜂に話しかけていたのだった。
玄関のドアのすぐ近くに、
蜂が巣を作っていた。
その蜂を見ての発言である。
蜂からすれば、
なぜ彼にドンマイと言われなければならないのか?
と疑問に思っていたことだろう。
一体どこがどういう風にドンマイなのか、
意味不明である。
ちなみに、ドンマイ、
というのは、
英語で言うところの、
ネヴァーマインドにあたり、
「氣にするな」
という意味である。
彼は、蜂に向かって、
「何を」氣にするな
と言いたかったのだろう。
おそらくこういうことだと思う。
人間は歳をとると、
結婚という行事に参加するものもいる。
そして30歳くらいが近くなると
周りの人間が結婚をし始め、
一人ぼっちの自分が
惨めに思えてくるのである。
これはあくまで推測である。
よって、
彼は、一人ぼっちの自分を
惨めだと思っており、
蜂さんに対しても、
「惨めな蜂さんよ、
お主もいい出会いがなかったか、
でも、氣にすることはない、
結婚なんて
してもしなくても同じなんだ、
一人ぼっちの夜、
幸せは雲の上に、
上を向いて歩こう、
そして、
友達になろうではないか、」
と言いたかったのだと思う。
その想いを、
「ドンマイやな 😉 」
の一言に込めていた。
しかし、
蜂は、彼の惨めな視線など
無視し、
いつのまにか
パートナー蜂を連れて、
2匹で巣を作っていた。
そして、彼は、
「あれ!いつの間に!」
とびっくりしながら、
少し寂しくなったのである。
それから、
蜂の巣からたくさんの蜂が生まれ、
どれだけ蜂がおるねん、
というくらい、たくさんの蜂が
暮らしていた。
繰り返すが、
玄関のドアのすぐ近くである。
彼は、蜂同盟を結んでいたので
刺されることはなかった。
とはいえ、
かつて
「ドンマイやな 😉 」
で満たされていた
こころの風船は毒針に
刺されてしぼんでしまっていた。
そして、いつの日か、
どんだけ蜂おるねん巣から
たくさんの蜂が姿を消していた。
みんな、旅に出たのだろうか。
巣には、
2匹の蜂だけが暮らしていた。
多分、老後の生活について
話し合っているのだろう。
しばらくして、
「おやっ?
1匹しかいないぞ。
しめしめ、
再びドンマイやな 😉 」
と惨めな言葉を浴びせようとしたが、
巣の裏側でひっそりともう1匹が
隠れていたので、
「なんだよ、
全然ドンマイじゃないじゃん 😥 」
ここぞとばかりに
ドンマイを言いたかった彼は、
内心、
巣の裏側で暮らす蜂を
見なかったことにして、
1匹の蜂だけを見たことにして、
再び、ドンマイやな 😉
と言ったことにしようかと
迷っていたようである。
しかし、そのような行為は
見て見ぬ振りをすることに等しい、
と彼は自分の良心に従い、正直に、
「なんだよ、
全然ドンマイじゃないじゃん 😥 」
と発言したのだと思う。
・
・
・
蜂が活動を始めて、
数ヶ月以上が経過していた。
彼は、蜂を見ない日はなかった。
毎日蜂を見ていた。
1匹の時も
2匹の時も
どんだけ蜂おるねんの時も
老後を迎えた時も
蜂を見守っていた。
「こうして自分も歳を
とってゆくのだろう」
と彼は夕焼け空を見ながら呟いた。
「でも”こうして歳をとる”
の中にある、“こうして”に
どうして従う必要があるのだろう?」
色々考えていくうちにあたりは
真っ暗になった。
・
・
・
ある日のこと。
コンコン、
「おいしいお芋があると聞いて」
・
・
・
そして、
君は、
いなくなった。
おしまい。
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