彼は28歳、男性、身長は170cm、
好きな食べ物はブドウである。
 
ブドウジュースが飲みたくなった彼は、
ブドウジュースが飲みたいと思いながら
手元にブドウジュースがない現実を見ていた。
 
そして、今朝。
蜘蛛の巣に引っかかったセミを
見つけた。
 

いや、見つけてしまったのだ。
 

(セミじゃないかもしれないけれど
 セミだということにして話を進める)
 
 
雄大なアルプスを背に
自然界の残酷さが笑っていた。
 
彼は美しい自然だけを享受して
生きたいと思っていた。
こんな蜘蛛の巣に引っかかった
セミなんか見たくない。
 
草刈りで犠牲になるカエル君の
姿なんて見たくない。
 
どうか、美しい自然だけを。
彼に。
 
セミはまだ生きていた。
幸い、蜘蛛は朝寝坊しているらしい。
 
彼は、
 
 
「いいんだ、いいんだ、
 このままで。セミを助けなんてしたら
 朝起きてきた蜘蛛が腹をすかせて
 機嫌が悪くなるだろ?
 
 だから、
 
 いいんだ。
 
 こ の ま ま で。」
 
 
と思うことすらせず、
セミを蜘蛛の巣から解放した。
 
すぐ飛び立ってくれると思ったが
蜘蛛の巣の粘着性が強力で
セミの羽にへばりついてしまっている。
 
糸一本分の重さくらいだろうが
セミにとってみれば、
20kgくらいに感じる重さだろう。
 
彼はセミについた蜘蛛糸を
取り除こうとしたが
その粘着性に嫌気がさしてきた。
 
強く引っ張ればセミの羽を
傷めることになるだろう。
 
彼は手先が不器用で
自分の不器用さにイライラしながら
 
 
「あー、こんなことになるんだったら
 蜘蛛の巣に引っかかったままにしておけば
 よかった。」
 
 
と思いながらも
 
慎重にゆっくり、
蜘蛛の糸を引き離した。
 
セミはしばらく彼の手の上で
休憩をした。
飛ぶことを忘れたのか
というくらい休んでいた。
 
「君はこれからデートの
 予定があるのだろ?
 早く行かないと
 恋人の機嫌を損ねるぞ。」
 
と彼は思った。
 
セミは、
林の中へ飛んで行った。
 
 

 
 
どうしてセミを助けたのよ!
 あなたが遅刻したせいで
 予定の電車に乗り遅れてしまったじゃない!
 
 
と彼は彼女に怒られた。
 
 
「僕たちには、
 次の電車を待つことができる
 時間がある。
 
 でも、蜘蛛の巣のセミは
 デートの待ち合わせ場所に
 行くことすらできていない。
 
 しかもそこで
 蜘蛛の朝ごはんになってしまえば、
 
 これから一生、
 次の電車を待つことはできないだろう。
 
 次の電車を待っている
 
 時 間 が ど れ だ け
 し あ わ せ な こ と か。
 
 そして
 それを奪う奴がいたら必死になって
 助けるだろ?
 
 だから僕は蜘蛛の巣から
 セミを解放したんだ。」
 
 
と思うだけにして、
 
 
「ごめん、オレンジジュースを
 買うから許してほしい」
 
 
と近くの自販機にお金を
入れた。
 
おしまい。
 
 
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